Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第23回の目次
● 9月の行事
● イギリスの家の年齢をあてよう(2)
● 一言イギリス英語講座 - "swing the lead"
● バイク盗難

● 9月の行事

9月といえば、イギリスでは進学・進級シーズンです。(ということは、イギリスの学生たちは、長い夏休みを宿題無しに思い切り楽しむことができるわけですね。うらやましい。8月31日の家族総出の苦労もないわけです。)野外コンサートが終わり、いよいよ本格的な室内コンサートのシーズンが始まります。芸術の秋ですね。

では、今回はちょっと少ないのですが、9月の行事をご紹介します。

The Last Night of the Proms (9月11日)

「プロムス」の愛称で親しまれる Promenade Concerts (詳しくは第18回「7月の行事」をご覧下さい。)の最終日。約2ヶ月に渡って、毎日聴衆を楽しませてくれた夏の最大音楽イベントが幕を閉じます。今ではすっかり、夏の終わりを告げるイギリスの風物詩となりました。雰囲気はまるでパーティー。この日は無礼講です。クライマックスは、「威風堂々」、「ルール、ブリタニア!」「エルサレム」などの愛国歌の合唱。会場が一体となり、あちらこちらで、ユニオン・フラッグが振られます。(もっとも、最近は外国の国旗もたくさん見られますが。)たぶん、すべてのイギリス人はこの日はイギリス人に生まれてよかった、と思っていることでしょう。近代の戦争では正義の味方として勝ち続けている国の強みとでもいいましょうか。自分の国を愛することに対してうしろめたさを持たないですむ国民はうらやましいものです。この日は、2ヶ月の間、コンサートの会場となった、ロイヤル・アルバート・ホールの他に、ロンドンのハイドパークや、バーミンガム、ウェールズのスワンジーでも、同様の催しを屋外で楽しむことができます。

Autumn begins (9月23日)

秋分の日。日本でも暑さ寒さも彼岸までと言いますが、イギリスの暦の上でも、秋に入ります。もっとも、例年、これよりもずっと先に、気候的にはすっかり秋になっていますが。いよいよ、この日を境に夜のほうが長くなり、長く暗い冬はすぐそこです。


● イギリスの家の年齢をあてよう(2)

前回に引き続き、イギリスの家の話です。お約束通り、過去250年間に絞り、年代別に各住宅建築様式の特徴をご紹介していきます。なぜ、250年かというと、現在実際に人が住んでいて、みなさんも今後手に入れる可能性の高い家というのは、このあたりの年代に作られたものが多いからです。これらすべての時代に共通する主な壁の材料は、煉瓦です。それゆえに、これらの時代に作られた家には、今でも人が住むことができるわけですが。(ちょっと重くて申し訳ありませんが、一目で時代のわかる年表をご参照下さい。 - 年表

Georgian (ジョージ王朝)18世紀半ば〜19世紀初め

キーワードは「古典主義」と「左右対称」です。古典主義というのは、ローマ・ギリシャ文明復古。この時代の建物は、ローマやギリシャの神殿を土台にしています。特に、玄関はその特徴を表すポイントです。玄関を覆う立派な屋根やアーチ、ドーリア式やイオニア式の柱が玄関ポーチを飾ります。このような堂々とした玄関を中心に、均整の取れた上下引き戸が左右対称に並んでいるのがこの時代の住宅の特徴です。パネル・ドアの上に、半円形の明かり取り窓までついていたら、間違いなく、この時代。屋根の角度は浅く、正面からはほとんど屋根が見えない建物も少なくありません。

火災防止のため、18世紀初頭にロンドンでは、張り出し窓を禁止する条例が発令されたため、この時代のロンドンの住宅には出窓は使われていません。たまに、湾曲したガラスを利用した、弓形に張り出した窓が見られるのは、その家は、この時代には店舗として使われていたことを物語っています。また、窓のあるべき場所が煉瓦でふさがれている家をときおり見かけます。これは1696年に導入された窓税を避けるための策と考えられます。しかし、ドアの真上の窓がふさがれているような場合は、単に左右対称の美的効果を出すためである可能性のほうが高いでしょう。

壁は、煉瓦造りが主ですが、この時期、煉瓦の上から化粧しっくいを塗ることが流行りました。18世紀半ばからの建築ブームのため、煉瓦の需要が増加し、この需要に応えるために質の悪い煉瓦が出回りました。そこで、このような煉瓦の欠点をカバーするために、また、雨や風から煉瓦を守るために、化粧しっくいが用いられたわけです。また、このような手法で石の質感を出すことにより、良質な石の手に入らない地方でも、古典的なデザインの荘重な建物をさらに堂々と見せることを試みたわけです。好まれた色は、当時あこがれの的であったバース産の石と同じ、クリーム色でした。

テラスド・ハウス(家のタイプについては、第11回「イギリスの不動産広告を読む」を参照して下さい。)が登場したのもこの時期です。今でも、全国で100万軒以上のジョージ王朝の家に人が住み続けているそうです。

Regency (摂政時代)19世紀初め

基本的には、ジョージ王朝様式を受け継いでいます。つまり、古典主義が主流。ただし、堂々として重々しいジョージ王朝式よりは、ちょっと軽めです。これに、大英帝国の海外展開という時代背景を反映して、エジプト・インド・東洋などの異国趣味がつけ加わります。また、この頃、新鮮な空気と水浴びは健康によいという考えが広まり、海辺のリゾートや温泉場が人気を集めます。最も人気のあったのは、ブライトンとバース。この他にも、レミントン・スパやチェルトナム、ウェイマスなどの街では、今でもこの時代の典型的な住宅が見られます。こういった建物の特徴としては、玄関ポーチやバルコニー、窓の手すりなどに鉄をふんだんに使った飾りが用いられていることがあげられます。また、前述した通り、ロンドンでは出窓は禁止されていましたが、これらの海岸のリゾートなどの住宅では、弓形の張り出し窓が多く見られます。

Victorian (ヴィクトリア朝)1837年〜1901年

いろいろな様式が交錯した、なんでもありの時代。古典主義、ロマネスク、ゴシック、とさまざまな様式が取り入れられました。特に、18世紀後半にリバイバルしたゴシック様式は、当時の文学潮流とあいまって、19世紀に入ると、さらに流行に拍車がかかります。ゴシック様式の特徴は、最上部が尖った、あるいはアーチ型の窓。ガラスには、鉛の格子模様が入っていることがあります。

職を求める人々で、都市部での人口は急増し、テラスド・ハウスの建設がさらに進みます。労働者階級の住むテラスド・ハウスは平面的で、簡素なものですが、中産階級用のテラスド・ハウスには古典主義的な装飾が多く用いられます。出窓はこの時代の中産階級用のテラスド・ハウスの特徴。これは、ジョージ王朝式の湾曲したガラスを使った弓形の張り出し窓とは違って、大きな平たいガラスを用い、角度をつけて取り付けたものです。三面窓が主流。

この時代の屋根は主にスレートです。上部にガラスのはめ込まれたパネル・ドアはこの時代の典型。これにステンド・グラスが使われていたら、間違いなくこの時代か、次のエドワード朝です。

中産階級の郊外への流出は進み、セミデタッチド・ハウスが登場します。郊外のセミや戸建て住宅には、チューダー朝、ゴシック、イタリア風など、様々な建築様式が取り入れられ、個性が花咲きます。

Edwardian(エドワード王朝)20世紀初頭 - Modern 現代

エドワード朝初期は、もちろん前のヴィクトリア朝の様式を受け継ぎます。第一世界大戦後は、さまざまな時代(比較的近年のジョージ王朝やヴィクトリア朝などを含む)のリバイバルもあり、時代の決まった様式というものがこの頃からなくなってきます。特筆すべきは、1930年代のアールデコでしょうか。窓、玄関ポーチの屋根などに、曲線が多用されているのが特徴です。(テレビの「ポワロ」シリーズで金持ちが殺されると、それはいつも同じ大邸宅だということにわたしは密かに気づいています。きっと、テレビ撮影のできる、アールデコ様式の建物というのは数が限られているのでしょうね。)特に、張り出し窓には角に湾曲したガラスを用い、優雅な曲線が強調されています。そして、1960年代には悪名高い高層住宅が登場します。

ジョージ王朝風の家ヴィクトリア朝の家
ジョージ王朝風ヴィクトリア朝
実際に建てられたのはもっと最近でしょう。窓の配置など全体の雰囲気がジョージ王朝様式の特徴を表しています。本物だったら、もっと玄関がこっていたかも。出窓が特徴です。特に、角のついた三面になっているものは、この時代の特徴。


● 一言イギリス英語講座 - "swing the lead"

前回に引き続き、海軍や船上生活に語源を持つ慣用句をご紹介します。

On the fiddle, a square meal

前者の意味は、詐欺、ごまかしをすること。海軍または昔の船一般では、船員は、正方形の皿に食事を盛りつけてもらいました。この四角い皿の縁は持ち上がっており、この縁は、fiddle と呼ばれました。皿からあふれるくらい盛り付けてもらうと、このような船員たちは、"On the fiddle" であるといわれ、そこからずるをする(大阪弁で言う「ずっこ」ですね。)、というような意味に発展したようです。一方、この食事が盛られた正方形の皿からは、「充実した(量も多くて、おいしい)食事」を表す、square meal という言葉が生まれました。

Three sheets to (in) the wind

意味は、酔っぱらっていること。to の代わりに in を使うこともあります。この場合の sheet は帆ではなく、ロープのことを指すそうです。3本のロープがゆるんでいて、風が吹くと、船はまるで酔っ払った船員のように片側に傾くことから、この表現ができました。

Swing the lead

仕事をさぼる。昔の帆船は、岸近くなると帆をたたみ、手こぎのボートに曳かれて岸につけました。もちろん、大きな帆船を曳くのはたいへんな重労働です。ところがこの重労働をただ一人免れることのできる、得な役割がありました。それは、水深を測る役目です。大きな帆船はそれなりの深度がないと座礁してしまいますから、これは重要な役目でもありました。正確な海図や深度計のなかったこの頃、鉛を紐の先につけ、それを船から垂らして深度を図りました。こんな楽な仕事のおかげで、重労働を免れることができたのですから、役得です。こうして、「鉛をぶら下げる」が転じて、「仕事をさぼる」になりました。


● バイク盗難

先日、オートバイを盗まれました。ある朝、車庫の前に停めてあったはずの夫の通勤用バイクが忽然と消えていたのでした。5年前にビーン村に引っ越してきた時、「ロンドンから安全を求めてビーン村に引っ越してきた夫婦、泥棒に入られる。」というタウン誌の記事を読んでショックを受けていたものでした。しかし、それからお隣の車は二度盗難に遭い、我が家の車からもカーステレオが盗まれました。盗まれたものが戻ってくる可能性はほとんどありません。窃盗は日常茶飯事なので、警察も貴重な時間をいちいち費やしている暇はないのでしょう。

8月20日に、ノーフォークの田舎で、農場主が泥棒に入った16歳の少年を射殺し、共犯者にも怪我を負わせるという事件が起こりました。この農場は、つい最近にも泥棒に入られており、最寄りの警察に通報するにしろ、かなりの距離があります。このような状況で、この事件は、賛否両論の意見を呼びおこしました。焦点は、法をおかそうとする者(泥棒)を法律で守ってやる必要はあるのか。」ということ、そして「でも、だからといって、法を自分の手で執行してもいいものなのか。」という点だと思います。現在、この農場主は、殺人の容疑で取り調べを受けています。過去の類似の例から言って、殺人ということはたぶんないでしょうが、アメリカのように、正当防衛で無罪放免ということもないでしょう。たぶん、傷害致死といったところに落ち着くものと思われます。同情には値するが、でも、みんながこれをしたら、法と秩序が乱れるから、というのが大方の意見でしょう。

我が家のバイクが盗まれたのは、ちょうどこの事件が話題の中心になっていた時でした。事件に対するわたしの意見ですか?「こいつら、一度死なないとわからないんだよ。」

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