● 独断と偏見によるタブロイド紙評
イギリスの新聞は実に個性豊かです。それに比べて、日本の新聞にはそれほど
違いが見られません。これは、たぶん日本の新聞が見解の中立性というものを重
視しているからでしょう。しかし、完璧に中立的な報道というのは有り得るでしょ
うか?人間が取材・執筆・編集している以上、なんらかの形でその人の見方が記
事の中に表われるのは、しかたのないことだと思います。それならそれで、中立
的な報道という建前を崩してしまったほうが、ずっと誤解が少ないのではないで
しょうか?イギリスの新聞は、新聞全体の政治的立場、記者個人の意見というの
が、記事の中にはっきりと表われています。最初から、この新聞は右寄り、左寄
りというのがわかっていれば、読み手のほうはその分を割り引いて読むことがで
きるわけです。このほうが、記者あるいは新聞社の判断によって選択された事実
だけが列挙された記事を、真実と思って読むよりはずっと害がないのではないで
しょうか?
ちょっと前置きが長くなりましたが、そんなイギリスの新聞の中でも、思い切
り個性あふれるタブロイド紙を、わたしの独断と偏見でご紹介していきたいと思
います。
The Sun
実は、わたしはこの新聞を読んだことはあまりありません。別にフェミニスト
ではないですが、やっぱり3ページ目にトップレスのおねーちゃんの写真がでか
でかと載っているような新聞は、ちょっと恥ずかしくて人前では読めません。対
象読者層は労働者階級の男性。(でも、若い女性も結構読んでいるみたいですけ
れど。)
伝統的に右寄り。湾岸戦争の時には、かなり好戦的なスローガンが一面を飾り
ました。日本大嫌い。昭和天皇に対する過激な非難を載せたことでも有名です。
それをふまえて、昨年の天皇皇后両陛下の訪英前には、当時の橋本首相が特別な
コメントを送ったのも、この新聞です。
政治的には、保守党支持で知られていましたが、2年前の選挙の時には突然、
労働党支持にまわり、国民をあっと言わせました。労働党の大勝はそのためだと
いう噂も。そのくらい発行部数の多い新聞ではあります。
The Mirror
これも労働者階級対象。きっと、読者のほとんどは年金生活者なのではないか
とわたしはにらんでいます。金持ち大嫌い。どうも貧乏人のひがみみたいなのが、
記事に表われていて、わたしは好きではありません。保守党政権時代に、未婚
の母への公共住宅の優先割り当て制度を廃止するという案を出した政府関係者に
ついて、未婚の母から家を取り上げようという張本人がこんな大邸宅に住んでい
る、という記事が航空写真付きで載りました。自分が働いて稼いだ金で大邸宅を
建ててどこが悪い?問題は、納税者の金で(という意識すらなく、「国がくれる
金」で)衣食住を一生保証されていると思っている未婚の母のほうである。
それでも、記事はおもしろい。特に、短い記事。どこから、こんなおかしい話
を見つけてきたの?というくらいおもしろい。そのかわり、5W1Hがぼろぼろ
抜けているので、情報源としては役に立ちません。
Daily Mail
こちらのほうは、たぶん中産階級の下のほうを対象にしているのではないかと
思われます。記事のほうはわりと中立っぽいですが、専属コラムニストによるエッ
セイとか社説を読むと、かなり右寄りということがわかります。労働党嫌い。で
も、保守党はちょっと頼りないので、全面的にバックアップする気にはなれない。
そんな感じ。
記事のほうは平均的。特におもしろい記事もないですが、まあまあ興味深い記
事はあります。一応社会人として知っておきたい事件は網羅しているようなので、
情報源としては使えるでしょう。
土曜版にはどこの新聞にも必ずテレビガイドがついてきますが、全紙(高級紙
も含めて)比較して、ここが最高とわたしは判断しました。
Daily Express
読者層は、メイルと似ているのではないでしょうか?中産階級の下。ただし、
立場はもうちょっと、右寄り、保守党びいきかも。わたしがイギリスに来たばか
りの頃は、「あなたの税金はこのようにして無駄遣いされている。」(主に、国
の福祉に頼り切って全然働かない人たちによって)という記事に、一緒になって
怒り狂っていました。この手の記事がお得意のようで、それから5年くらい経っ
た時に、また久々に読んでみたら、「あなたの税金が無駄遣いされている例を書
き送って下さい。」というコンテストをやっていました。そこには、それまでの
投書で指摘された無駄遣いの額の累計グラフが。最高金額の無駄遣いを指摘した
人には賞が贈られたようです。さすがに、かつては税金の無駄遣いに体中の血を
煮えたぎらせていたわたしも、もう慣れっこになってしまい、これくらいではエ
キサイトしないのでした。
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