●苗字の話
第16回では、名前のほうの話をしましたが、今回は苗字について取り上げて
みたいと思います。
まず、苗字の由来ですが、もっともポピュラーなのが、名前から派生したもの
です。これに、接頭語、あるいは接尾語がついて苗字となりました。接頭語には、
ゲーリック語の mac 、ウェールズ語の ap または ab 、ノルマン人のフランス
語の fitz などがあります。スコットランドやアイルランドでよく見られる mac
という接頭語は、「(だれそれ)の息子」を表します。マクドナルドは、ドナル
ドさんの息子というわけですね。また、アイルランド人によくある O' という接
頭語は「だれそれの孫」を表します。ライアン・オニールのオニールは、ニール
さんの孫という意味です。接尾語としては、英語の s や son が挙げられます。
これも「だれそれの息子」を表します。
この他に、地名や場所(たぶん出身地を表したのでしょうね。)が源となった
ケースもあります。Bradford, Redhill, Hall などはその典型です。また、職業
に由来するものには、Smith, Glover, Sheppard などがあります。ニックネーム
から来た名前には、Blake, Boot, Cape などが挙げられます。お気に入りの洋服
から来た例が多いようです。Winter, May などという苗字は、季節に基づいた苗
字の典型。また、ステータスに基づくものには、 Bachelor など。
イングランドに苗字が登場したのは、ノルマン人征服直後(11世紀)です。
ノルマン人によってもたらされました。"de 〜" というように、北フランスの自
分の領地の名前が苗字として使われました。
スコットランドの苗字も、ノルマン人に由来するものが意外に少なくないよう
です。Sinclair は、スコットランドの典型的な苗字と思われていますが、これ
も実はノルマン人に由来するそうです。他には、地名や英語・ゲーリック語に語
源をたどるものがあります。
ウェールズで苗字が使われるようになったのは、ずっと遅く、18世紀になっ
てからだそうです。16世紀頃には、すでにイングランドの官僚と関わりのある
人々の間で、苗字が使われていましたが、一般庶民にまで普及したのは、18世
紀以降です。その歴史から言っても、英語の名前が多いようです。また、下記の
表からもわかるように、一定の地域にある一つの名前が集中していることでもよ
く知られています。そのため、同姓同名が多いので、"Jones the Post" (郵便
配達夫のジョーンズ)というように、職業などで区別しているようです。
7月に選挙人名簿に基づいたイギリスで最も多い名前の一覧表が、ある信用調
査機関から発表されました。
| 名前 | 最も集中している地域 | 人数 |
| 1 | Smith | Lerwick(シェットランド諸島) | 514,898 |
| 2 | Jones | Llandudno(北ウェールズ) | 391,909 |
| 3 | Williams | Llandudno(北ウェールズ) | 267,408 |
| 4 | Brown | Glashiels(スコットランドに近い イングランド北東部) | 242,765 |
| 5 | Taylor | Oldham(イングランド北西部) | 236,123 |
| 6 | Davies | Swansea(南ウェールズ) | 202,773 |
| 7 | Wilson | Kilmarnock(スコットランド) | 173,961 |
| 8 | Evans | Swansea(南ウェールズ) | 161,723 |
| 9 | Thomas | Swansea(南ウェールズ) | 144,591 |
| 10 | Johnson | Lerwick(シェットランド諸島) | 138,554 |
注:人数は、その苗字が、選挙人名簿に現れる回数を表します。
第一位のスミスは、イングランドの苗字で上記のように職業(かじ屋)に由来
する苗字です。
第二位のジョーンズは、イングランド及びウェールズの苗字で、名前の John
から来ています。特に、ウェールズにとても多いことで有名です。(ウェールズ
で石を投げれば、ジョーンズに当たる。)また、意外に知られていないのが、ユ
ダヤ人の名前でもあることです。
第三位のウィリアムズはイングランド及びウェールズの苗字です。ノルマン人
の名前(征服王の名前そのものでもあるわけですが)、William から来ています。
第四位のブラウンはイングランドの名前で、ニックネームに由来します。たぶ
ん、髪が茶色だったとか、顔が浅黒かったか、茶色の洋服が好きでそればかり着
ていたとかそんなところからついた苗字と思われます。
第五位のテーラーはイングランドの名前で、職業(仕立て屋)から来ています。
第六位のデイビスはイングランド・スコットランド・ウェールズ・及びユダヤ
人の苗字で、 David という名前から来ています。
第七位のウィルソンは、第三位のウィリアムズと同じ語源。
第八位のエバンズは、ウェールズでは、Ifan または Evan から来ており、スコッ
トランドでは、Ewan が元になっています。いずれも、英語の John に相当します。
ユダヤ人の名前でもありますが、こちらのほうの語源ははっきりしていません。
第九位のトマスは、イングランド・ウェールズ・コーンウォールの苗字。中世
において人気のあった聖人の名前、Thomas から来てます。
第十位のジョンソンは、イングランドの名前で、ヘブライ語の人名ヨカナンに
由来します。
いかがでしたか?順位のほうは予想通りだったでしょうか?
わたしの友人は、全盛期のデュラン・デュラン(イギリスのロックグループ)
のファンでした。デュラン・デュランは、当時5人からなり、そのうち、3人が
テイラー姓でした。しかも、この3人には、血縁関係はまったくなし。それで、
彼女には、テイラーというのは、イギリスによくある苗字なのだという印象があっ
たようですが(なんと言っても、5人に3人の割合ですものね。)この調査はま
さにそれを裏付けるものでした。
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