Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第43回の目次
● イギリスの危機感
● イギリスの騎士道は死んだか?
● 一言イギリス英語講座 - 今回はお休みです

● イギリスの危機感

(この文章は、12月4日に発行されたメールマガジンを、ホームページ用に書き改めたものです。)

とうとう、11月は一度も更新ができないまま終わってしまいました。たいへん申し訳ありません。この間に、イギリスは、近年にない危機感に見舞われていました。その原因は3つ。まず、ロンドン郊外のハットフィールドでの電車事故に続く鉄道の混乱。線路点検のための運休と安全のためのスピード規制で、ダイヤはめちゃくちゃ。そして、あてにならない鉄道に愛想をつかせた人々がマイカーを使い始めたため、各地の道路の交通量は通常の25%増で、どこも渋滞。道路も鉄道も混乱し、通勤者のイライラが募りました。

そして、二つ目は、洪水。イギリスはこれまで天災とはあまり縁のない国だったのですが、10月から11月にかけての大雨、特に集中豪雨で、川の堤が決壊し、多くの家が水に浸かりました。

最後が、ガソリン危機再燃の懸念。9月に石油精製所周辺の道路を封鎖して抗議活動をした人たちが政府に与えた60日の猶予期限が切れるのが、11月13日の真夜中でした。そこで、その1週間前くらいから、9月のガソリン危機の再現を恐れる人々によるパニック買いが見られました。

12月を迎えた今、これらの問題は小康状態に入っているようです。

電車は相変わらず遅れていますが、鉄道会社は、乱れたダイヤの時刻表なるものを発行することによって、これに対処しています。もっとも、その時刻表も守られていないようですが。通勤者も諦めの境地に達したのか、最近は一時見られたような一触即発的なピリピリした雰囲気はないようです。

相変わらず雨はよく降るものの、10月末から11月にかけての集中豪雨はなくなりました。それでも、洪水の被害に見舞われた家では、平常の生活に戻るのには、まだ時間がかかりそうです。

ガソリン危機の再燃は回避されました。11月13〜14日には、各地でトラックやトラクターの小規模なデモ行進がありましたが、混乱はほとんどありませんでした。9月の騒ぎが騒ぎだっただけに、線香花火的結末には残念な気がしないこともありません。結局、一般の車利用者にとっては、ガソリン価格は相変わらず高いままです。

これからは、人々の関心はクリスマスに移るにつれ、だんだんに雰囲気も楽観的なものに変わっていくでしょう。クリスマスはもうすぐ。みなさん、イギリス宛てのクリスマスカードは準備できましたか?今年は、鉄道貨物の遅れが予想されるため、早めに投函するように郵便局では訴えています。

(この後、再びイギリスは暴風雨に見舞われました。このような天気は、3月まで続くという予報も出ています。洪水の被害と鉄道と道路の混乱は、今後も続きそうです。)

● イギリスの騎士道は死んだか?

イギリスと聞いて真っ先にわたしたち日本人が思い浮かべるものの一つが「イギリス紳士」ではないでしょうか?しばらく前にモーニングショーで、「騎士道は死んだか?」という話題を扱っていました。そこで、このメールマガジンでも、この点について検証してみたいと思います。

女性に席を譲る

前述のテレビ番組で最初に取り上げられていたのがこの点。最近のイギリス男性は電車の中で女性に席を譲らない。男性側の言い分としては、女性というだけで席を譲ると気を悪くする女性が多いからということでした。女性をいたわる行為というのは、女性は(体力的に)劣るものであるという発想から来ていると思う女性は、どうやらわたしだけはないようです。最近は、お腹の大きい女性にすら席を譲らない男性も多いと聞きます。妊娠中なのか、そうでないのか判別不可能な女性もイギリスには少なくないですから、男性が慎重なる気持ちもわからなくもありません。しかし、5年前に出産した友人によると、彼女はかなり痩せているほうなのですが、それでも地下鉄で席を譲られたことはあまりなかったということです。男性もせっかく確保した席は他人には譲りたくないということなのでしょうか。

レディーファースト

これはいまだに健在です。男性がドアを開けようとしていて、女性の存在を背後に感じると、あるは反対側に女性が立っているのを見ると、必ずドアを開けて先に通らせてくれます。部屋に入る時にも、タクシーに乗り込むのも女性が最初。イギリス人女性のほうも慣れたもので、当然という顔をして通っていく人もいますが、やっぱり「ありがとう」くらいは言いたいものですね。

レストランで女性が座る時に椅子を引いてくれる。これはもう滅多に見られません。ウェイターくらいのものでしょう。たまにこんな男性がいると、女性の間で話題になってしまうくらいです。コートを着るのを手伝ってくれる。これはよく見られます。

重いものを持ってくれる。女性が重いもつを持つべきではないという暗黙の了解が社会全体にあるようです。日本の会社でコンピュータを一人で運んでいたわたしなんかにしてみると、まさにカルチャーショック。しかし、自分でできることは自分でするがモットーのわたしでも、こういうカルチャーに慣れるのはいたって簡単でした。ある日、イギリス人の女性が「○○(日本人男性と結婚している日本人女性)は、すごい。重い買い物 でも一人で運ぶのよ。」と言った時には、ちょっと複雑な気持ちでした。日本人女性のたくましさを褒められているのか、日本人男性の思いやりのなさの咎められているのか・・・?それとも、単なる文化の違いをコメントしただけなのでしょうか。

ラウンド

パブで仲間全員の飲み物を順番に買うことをラウンドといいます(割り勘はイギリス人の習慣ではありません。)が、これには女性は加わらないのが普通です。それが今までの習慣でした。しかし、最近は女性でも積極的にラウンドに加わる人が増えてきています。酒好きなイギリス人女性の友人は、グループで飲みに行く時にも、自分のグラスが空になると、「あなた、何を飲んでいるの?」と自分から飲み物を買いに行きます。男性が自分のグラスが空になっているのに気づいてくれるのをじっと待っているよりはずっといいではありませんか。

タクシーの横取り

前述のテレビ番組ではこの点も取り上げていました。最近は、道路で女性がタクシーを停めようとしているその一歩手前に突然現れ、平気でタクシーを停めて乗り込んで行く男性がいるそうです。「静かに流れよテムズ川」というエッセイ集の中で木村治美さんは、タクシーの横取りをするアラブ人男性に怒りの筆を振るっていらっしゃいますが、最近はイギリス人男性も似たようなものらしいです。

以上、いくつかの点について、「イギリスの騎士道は死んだのか?」について検証してきました。要するに、人間余裕がなくなると、なりふりを構わなくなっていくということでしょうか。男性も電車では座りたいし、雨降りの金曜日の夜には、女性を出し抜いてでもタクシーを拾いたい。生存競争の厳しい世の中で、紳士的態度を保つのはたいへんなことかもしれません。そして、女性の強くなったこと。(経済的にも、体力的にも)もはや、いたわられるべき理由もなくなりつつあるのでしょう。さて、みなさんは、イギリスの騎士道は健在だと思われますか?

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