Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第63回の目次
● 2004年の流行語〜"Chav"
● チャールズ皇太子の再婚

● 2004年の流行語〜"Chav"

もしイギリスに公式の流行語大賞というものがあったら、たぶんこの言葉が昨年の栄誉に輝いたでしょう。イギリス英語の権威と言われるオックスフォード英英辞典入りも果たした、この言葉の定義は、「ある特定のファッションに追随する、その多くは教育レベルのあまり高くない若い人」ということです。19世紀半ばのロマ(ジプシーという名称のほうがよく知られていますが)の言葉で、子供を表す"Chavi"が語源となっていると言われています。

実のところ、チャヴを定義づけるのには難しいところがあります。最大公約数が上記のオックスフォード英英辞典の定義でしょうが、チャヴにはさまざまなイメージが含まれ、現在もそれは変化し続けています。が、別名"council-estate chic"とも呼ばれるように、多くの人のチャヴに対するイメージは、次の2つにまとめられるでしょう。まず、(1)都会の低家賃住宅に住み、社会や権威・権力に不満を持つこと、そして、(2)独特の服装をしていることです。アメリカでトレーラー・トラッシュと呼ばれる人たちの英国版と言う人もおり、アメリカのヒップホップ文化との共通点も多く見られます。

彼らの多くは、ロンドンを含む都市の中心部にある公営住宅に住んでいますが、こうした公営住宅では、都会のドーナツ現象が進むにつれ、スラム化が深刻な問題となっています。チャヴたちは、階級としては"under-class"に属します。イギリスには伝統的に、上流階級・中産階級・労働者階級の3階級があると言われてきましたが、実はその下に下層階級というものがあるわけです。定義としては、貧しい、職のない人たちということですが、近年の下層階級の特徴は、周囲の事情による失業者ではなく、働くことを美徳と考えず、職につこうとする気がないという点でしょう。手厚い福祉制度の副産物ともいえるかもしれません。

こうした下層階級に属する家庭では、子供のしつけや教育に対する関心も低く、子供たちは善悪の区別もつかないまま、若者となり、近隣の善良なる住民の生活を脅かす反社会的な行動をとる者も少なくありません。昼間ショッピングセンターでぶらぶらしているのは、まだまだ善良なほうのチャヴのイメージでしょうが、夜、暗い路地でたむろするチャヴたちのこわいイメージを先に思い浮かべる人もいます。チャヴを暴力と結びつけ、与太者・乱暴者と考える人たちも多く見られます。

こうした背景から、チャヴという言葉はこれまで蔑称として使われることのほうが多かったのですが、最近は彼らのもう1つの特徴である、独特のファッションのほうが注目されるようになってきました。

彼らは特定のデザイナーブランドと特定のタイプの服・アクセサリーを好んで身に着けます。真っ先に掲げないといけないのは、野球帽でしょう。特に、バーバリーは彼らのお気に入りのブランドです。これに手の届かない人たちは、その偽物の格子柄で我慢しますが、野球帽はチャヴにとって欠かせないものです。ここまで読んでピンと来たら、あなたはこのメルマガの愛読者。昨年あとがきの中で2回に渡って触れましたが、バーバリーの野球帽は、フーリガンのお気に入りアイテムでもあります。

次は、パーカーなどフード付きの上着。チャヴたちは犯罪者というわけでもないのでしょうが、最近警察の指導によって、盗難防止のため、野球帽やフード付きの洋服を身に着けた客の出入りを禁止する店も増えてきています。防犯カメラに映ったときに、犯人がこれらを身に着けていると、顔がはっきりと識別できないからということのようです。

そして、トレーニングウェア(ジャージー)の下(パンツ)。ブランドとしては、アディダスやカッパが人気ということです。足元を飾るのは、もちろん、リーボックなどのブランド物運動靴。それも、まるで今日おろしたばかりのような真っ白のものがおしゃれなのだそうです。

アクセサリーは金鎖のネックレスあるいはペンダントと相場が決まっています。それも幅広で、思い切りきらきらした派手なもの。しかし、純度の低い安物かあるいは金メッキです。女性のチャヴに欠かせないのは、直径5センチを超える輪状の金のイヤリング。また、トレーニングパンツに加え、超ミニスカートに先のとがったハイヒールというのも彼女たちのお気に入りの着こなしの1つです。

このようにファッション面でチャヴを定義するのはごく簡単なことです。チャヴが歩いてくれば、10メートル先から見分けることができます。最近では、こちらのファッション面が一人歩きを始めており、チャヴを一種の文化ととらえる向きもあります。独自の趣味は服装にとどまらず、車やペット・音楽などのライフスタイルにまで及んでいるということです。車は、安い古い車にスポイラーや大型のマフラーを取り付けた改造車、飼い犬は、ロットワイラーやブルテリアのような獰猛な犬というのがお決まりのパターン。音楽は、ラップやリズム・アンド・ブルース、ダンス音楽を好みます。

これまで、チャヴというとならず者を想像する人も多く、ネガティブなイメージがありましたが、将来はおしゃれというポジティブなイメージに発展するかもしれないという説を唱える人もいます。実際、チャヴたちの購買力に目をつけた携帯電話会社では、チャヴ向けの携帯電話サービスを始めたところもあるくらいです。

チャヴを代表する有名人としては、モデル(あまり多くの布をまとっていない写真が多い)でテレビタレントのジョーダンとジョーディー・マーシュ、男性では、サッカー選手のウェイン・ルーニーの名前がよくあがります。もちろん有名人ですから、巷のチャヴとは違って金はあるでしょう。が、彼らに共通する点で、彼らがチャヴの代表選手たるゆえんは、やはり、急に有名になり金持ちになっても育ちが隠せない、品が無いという点に違いありません。やっぱり、チャヴがポジティブなイメージを獲得するには、まだまだ時間がかかりそうです。

● チャールズ皇太子の再婚

チャールズ皇太子とカミラ・パーカー・ボウルズの結婚が2月10日に発表されましたね。イギリス国民がこれをどう受け取るかが興味があったのですが、デイリー・テレグラフの世論調査によると、国民の3分の2が2人の結婚を承認しているということです。が、チャールズ皇太子の王位継承については、反対派が賛成派をわずかに上回り、現女王の逝去あるいは退位の際には、1世代飛ばして、チャールズ皇太子の息子・ウィリアム王子が王位に就くことを希望する国民が過半数を超えるということです。もっとも、チャールズ皇太子の再婚に対してはどうでもいいという無関心な国民も多く、結婚発表当時の一番の関心は、結婚式の予定されている4月8日の金曜日が祝日になるかどうかということだったようです。でも、王室としては内輪だけでなるべくひっそりと執り行いたいようなので(ひっそりとしたロイヤル・ウェディングというものが可能ならばの話ですが)、国民の祝日は無理でしょう。だいたい、母親の女王すら出席しない結婚式を国を挙げて祝福するというのはありえない話です。

さて、私事ですが、2週間ほど前からブログを始めました。まだ内容は少ないですが、これから充実させていきたいと思っています。現在のところ、わたしのペドロランドでの生活を中心に、日記といった感じで記事を載せていますが、これからは、メールマガジンではなかなか扱えない、イギリス関係のタイムリーな話題も取り上げていく予定です。写真もたくさん載せていくつもりですので、お時間のあるときにでものぞいてくださいね。URLは下記の通りです。

http://blog.goo.ne.jp/michie-flamingo

では、次号でまたお会いしましょう。

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