Anglo-bites

 **イギリスつまみ食い**

第65回の目次
● 遠きにありて想うもの
● イギリスを席捲する日本育ちのパズル

● 遠きにありて想うもの

たいへんご無沙汰いたしました。勘の鋭い皆様ならすでにお察しになられていると思いますが、今回もまぐまぐさんからの督促による発行です。でも、今回は一応テーマがあります。「遠きにありて想うもの」と題して、外国で暮らすイギリス人たちが一番恋しく思うものを取り上げてみたいと思います。わたしにとっても身近な存在である在外英国人たちの現状をはさみながら、ご紹介してきましょう。以下の数字は、金融機関のAbbey National Offshoreが在外英国人を対象に行ったアンケート調査(2004年4月発表)に基づきます。

まず、トップを占めるのはやはり食べ物。わたしも日本へ帰る最大の楽しみの一つは日本料理です。帰る前にはぜひ食べたいもののリストを作りますが、日本滞在残すところあと数日となると、いつも食べ残したものが多くて焦り始めます。1日3食以上食べないと全部こなせない!という悪夢にうなされたこともあったほどです。

42パーセントの在外英国人が恋しく思うと応えたのが、伝統的なサンデー・ロースト。お昼時には家族が集まって、オーブンで焼いた牛肉・豚肉・ラム肉の塊や鶏などをローストポテトと温野菜とともにグレービー(肉汁、今では市販のインスタントものが主流です)でいただくのが伝統的なイギリス人の日曜日の過ごし方です。ペドロランド近辺ではイギリス人経営のレストランやパブが増え、サンデー・ローストも手軽に安く食べられるようになりましたが、自宅で料理しようとすると、塊肉が手に入りにくいのが問題です。スーパーマーケットではまず無理。イギリス人相手の肉屋まで出かけないといけません。それでも、まずラム肉の塊は手に入りません。それもそのはず、ペドロランド近辺の羊はヤギかと見まがうほど、ガリガリに痩せていますから。

日曜日のロースト料理に続くのが紅茶(37パーセント)。紅茶が手に入らない外国って、どこなのだろう?と思ったりもしますが、日本で売られている日東紅茶やリプトン紅茶などのお上品なティーバッグはイギリス人には物足りないのかもしれません。イギリスでは、マグカップで豪快に飲みますから。かく言う我が家でも、スペインのスーパーで簡単にイギリスの紅茶(テトリーという銘柄)は手に入りますが、それでも、イギリスに行くたびに、お気に入りの銘柄・PGティップスのピラミッド型ティーバッグを大量に仕入れてきます。ご近所のイギリス人のお宅でも、近くのスーパーで売っている銘柄はあまり好きではないと見えて、イギリスに行ったらタイフーンという銘柄を買ってきてくれるように頼まれることがあります。

実のところ、紅茶よりも重要なのはミルクのほうではないでしょうか。今回の調査結果には含まれていませんでしたが、わたしの記憶が正しければ、2001年か2002年に発表された同社の前回調査には、牛乳が含まれていたはずです。イギリスで紅茶といえば、ミルクは欠かせません。が、コーヒー国のスペインでは、牛乳といえばもっぱらロングライフです。コーヒーと一緒では違いはわからないかもしれませんが、紅茶に入れる場合(イギリス式では冷たいまま入れます)、新鮮な牛乳とロングライフとは味は全く異なります。

ペドロランド近辺でも、4年くらい前から、やっと普通のスーパーにも新鮮な牛乳が出回るようになりましたが、デザートの材料やデザートの添え物としてイギリス料理には欠かせないクリームのほうは、いまだにロングライフしか見当たりません。先日もイギリス女性たちの間で、「日曜日にトライフルを作ったの」、「えー、どこで生クリームを手に入れたの?」という会話が交わされていました。同じ生クリームでも、シングル・ダブル・ホイップ用など、こだわりのイギリス人には、ロングライフの調理用かホイップ用しかないスペインはさぞ物足りないことでしょう。

さて、話を元に戻して、食べ物部門第3位は、イギリス料理の代表とも言えるフィッシュ・アンド・チップスです。ペドロランドでもフィッシュ・アンド・チップスは手軽に食べられますが、やっぱりイギリスのおいしい店のフィッシュ・アンド・チップスには及びません。やっぱり衣の作り方と揚げ方が違うのでしょう。チップスのほうも、イギリスのおいしいジャガイモを使って、イギリス人好みの太め目の拍子木カットというのが秘訣なのかもしれません。

 

続くは、イングリッシュ・ブレックファースト(29パーセント)。ベーコン、ソーセージ、卵、トマト、マッシュルームをそれぞれ油を加えて焼いたもので、これにベークド・ビーンズ(インゲン豆をトマトソースで煮たもの。缶詰を使います)がついたり、イングランド北部ではブラック・プディングと呼ばれる太いソーセージ(豚の血を煮て、腸詰にしたもの)の輪切りが加わることがよくあります。皮肉なことに、本国のイギリスではイングリッシュ・ブレックファースト(盛りだくさんなことを強調するために、しばしば前にフルという言葉がつきます)が、だんだんに姿を消しつつあるとのこと。原因は、準備に時間がかかりすぎ、忙しいイギリス人の生活には合わなくなってきたためということです。それに対して、近年幅を利かせてきたのが、準備に時間がかからず、机の上で仕事をしながら食べられるシリアルやさらに手軽な棒状になったシリアルバー、クロワッサンなど、ヨーロッパ大陸式の朝食だそうです。やっぱり故郷は遠きにありて想うものになりつつあるようですね。

第5位はチョコレート(20パーセント)。イギリスのチョコレート消費量は世界でも上位に入るほど。続いて、12パーセントが恋しく思うのは、ベークドビーンズ。上記のイングリッシュ・ブレックファーストにはつき物ですが、トーストにバターを塗った上に、これをかけるとイギリス人の大好きな軽食の出来上がり。

さらに、インド料理とポテトチップスがそれぞれ10パーセントずつで、共に7位となっています。インド料理はすでに立派なイギリスの国民料理といえるでしょう。ペドロランド近辺でも、5年前には1軒しかなかったインド料理店が6軒までに増えました。が、やっぱりイギリスのインド料理ほどおいしくはないような気がします。ポテトチップスも、世界中どこにでもありそうな気がしますが、やっぱり国によって好まれる風味は違うようです。イギリスで一番の売れ筋は、ソルト・アンド・ビネガー(塩と酢)味だそうです。これは、フィッシュ・アンド・チップスを塩と酢(特にモルトビネガーが伝統的)で食べることと関係がありそうですね。ちなみに、ドイツで一番人気があるのはパプリカ味だそうです(日本では何でしょう?)。

以上が、食べ物編でした。食べ物を離れると、やはり一番恋しく思われるのは、家族と友人(75パーセント)。ペドロランド近辺でも、スペインに移住したものの、子供や孫と離れて暮らすのがつらくて結局イギリスに戻ったという話をよく聞きます。この場合、女性が、娘や娘の子供たちと過ごすためにイギリスに帰りたがるというケースが圧倒的に多いのです。イギリスでも、姑はやはり煙たがられる存在で、よくジョークにもなりますが、この場合義理の母は妻の母であることが多いようです。つまり、あまりうまく行かないのは、嫁姑の間柄よりは、婿と姑の関係であるこのほうがイギリスではよく見られるようです。

イギリスのテレビ番組を懐かしむ人も多く、ソープオペラ(24%)、コメディー番組(20%)、ニュース・時事番組(17%)、ドキュメンタリー番組(14%)という順番になっています。やっぱりソープ(連続ドラマ)は病みつきになるものなのですね。コメディー番組も理解ができます。アメリカのコメディー番組も多くイギリスに輸入されていますが、やっぱりイギリス人のユーモアというのは一味違うようです。

ちなみに、ペドロランド近辺では、イギリスのテレビ番組を配信するさまざまなサービスがあり、イギリス国内よりずっと安い年間契約料で、多くのイギリスの放送局の番組を見ることができます。

最後に、お店編。堂々第1位は、マークス・アンド・スペンサー。27パーセントの人たちが、海外にいるとM&Sで買い物ができないのが残念だと嘆いています。特に下着に関しては定評があるのが、M&S。16年前にわたしが日本を離れるときに、「海外では綿100%のパンツがないと聞いたから」と大量のパンツをプレゼントしてくれた友人たちがいましたが、もちろんM&Sなら、綿100%のパンツも豊富に品揃えしています。最近では、M&Sの食品部門もとても人気があります。

僅差で2位に甘んじたのが大手スーパーマーケットチェーンのテスコ。もっとも、最近のニュースではテスコは海外各地に進出し、売上も好調とのことです(日本にも出店しているということでした)。きっと、在外英国人たちの願いがかなえられたのでしょう。一方、やはりごく最近のニュースでは、イギリス国内各地でテスコのボイコット運動が起こっているとも。メトロというコンビニエンスストアに近い業態で、各地の商店街に進出するテスコは、地元の個人経営商店の存在を脅かす巨大企業として非難を浴びている一方、郊外に広大な土地を買って開発し、巨大スーパー形態の出店を急速に進めて、環境保護団体の反感を買っています。ファンが多い反面、敵も多いのもテスコいうことのようです。

また、20%の人たちが、行きつけだったパブにもう行けないことを悲しんでいるということです。これは、家族や友人と同様、ほかの土地では代わりになるものがないものでしょうね。

以上、イギリス人たちが外国生活で恋しがるものをご紹介してみました。ここに並んだものから、イギリス人とイギリス生活のエッセンスを垣間見ていただけたら幸いです。

● イギリスを席捲する日本育ちのパズル

6ヶ月ぶりの発行になってしまいました。個人的には、この間いろいろなことがありましたが、最大の出来事は、フランスに家を買ったことでしょうか。詳しいことは、その折々、ブログ「不思議のペドロランド」のほうに綴っておりますので、ご覧いただければ、とてもうれしく思います。

  
http://blog.goo.ne.jp/michie-flamingo/

さて、イギリスではこの1年ほど、Sudokuという日本のパズルが大流行しているのですが、ご存知でしょうか。わたしは、イギリスでブームになるまで全く知らなくて、「日本のものだよ!」とイギリス人たちに思い切り無知扱いされてしまいました。「数独」と書くらしいです。

簡単に表現すると、昔流行ったルービック・キューブを二次元のものにして、色の代わりに1〜9までの数字を使ったものという感じでしょうか。もともとはスイスの数学者が考案したもので、80年代に日本のニコリという会社がそれを改良して「数独」という名前で出版したのが、現在の形の始まりだそうです。85歳の親戚の女性が熱心に勧めるので始めたものの、わたしもすっかり病みつきになりました。昔から数学は苦手だったのですが、これの場合、数字は単なる便宜上の媒介といった感じで、数学とはまったく関係がありません(計算が絡んでいたら、絶対に手をつけなかったでしょう!)。今では、ほとんどのイギリスの新聞のパズル欄に、クロスワードと並んでSudokuがあるほどの人気です。ボードゲームや卓上電子ゲーム機まで登場しています。もし今までご存知のなかった方は、ぜひ一度挑戦してみてください。

では、また次号でお会いしましょう。

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