● イギリスで運転をする
車関係の3回シリーズを掲載すると予告し、1回目を発行した後、続けることができず、申し訳ありませんでした。前回はナンバープレートの話でしたが、今回は運転について取り上げます。
日本の運転免許証保持者は、イギリス定住が決まると、イギリスの免許証に交換してもらうことが可能です。この場合、日本領事館に日本の免許証の正式な翻訳を発行してもらい(有料)、それとともに交換の申請をしなくてはなりません。わたしが日本の免許証と交換にイギリスの免許証を受領した後、びっくりしたのが、運転免許の有効期限。気の遠くなるような未来の日付が記されていました。イギリスでは、一度免許を取ると、70歳の誕生日まで有効です。3年または5年に1度という日本の運転免許書き換え頻度とは、大きな違いです。70歳に至った後は、3年ごとに更新が必要となりますが、更新はインターネットでも可能なほど、いたってシンプルなものです。
自動車の運転は、17歳から許されますが、年齢の上限はありません。いつ運転をやめるかは、個人の判断にまかされています。高齢運転者の事故が増えていることから、上限を設けるべきだという議論もときおり聞かれますが、個人の自由を奪うことになることから、現行の状態が続くと予想されます。
イギリスで運転テストは、実技と学科の2つがあり、実技テストに合格するためには、まず運転の練習をすることになります。大手ドライビングスクールの中には、小さな教習コースを備えているところもあるそうですが(個人的にはお目にかかったことがありません)、ほとんどの人の場合、実際に路上に出て訓練をするのが実情です。
そこで、まず、仮免許を申請し、それが届き次第、L(Learnerの頭文字、ウェールズではウェールズ語のDysgwrの頭文字で、Dになるそうです)プレートを車につけて路上に出ることになります。日本の若葉マークは運転免許を取得した運転初心者ですが、イギリスのLマークは仮免を持っただけの訓練者を意味します。仮免中の人が路上訓練をする場合には、21歳以上の本免許所持者の同乗が義務付けられています。必ずしも資格を持ったプロの教官による教習を受ける必要はなく、家族・友人など規定を満たす人が同乗してさえいればいいわけですが、プロの教官と個人的な運転練習を組み合わせたほうが、成功率が高いことが調査結果からわかっています。運転免許テスト合格者は、平均47時間のプロによる教習を受け、20時間の個人的な練習をしているそうです。プロによる教習を受ける利点としては、教官が実際の実技テストのポイントを知っているので、そこに集中して能率的な訓練を受けられること、本人の上達過程を教官がきちんと記録していることなどが挙げられます。
プロの教官は、自動車学校に属する人もいますし、個人的に営業している人もいます。通常、自宅まで車で迎えに来てくれて、その車を使って訓練を受けます。ちなみに、現在、イギリスの平均教習費は、1時間当たり19〜25ポンド(現在の為替レートで、約2,400〜3,150円)だそうです。
実技テストを予約する前には、学科テストにすでに合格していることが条件となっています。Highway Codeと呼ばれる道路交通法集を読み、規制標識を理解していることが基本です。学科テストに合格した後、さらに実技テストでも合格すると、2年以内に仮免を本免許に交換することが可能となります。本免許は、どちらのタイプの車を使ってテストに合格したかによって、オートマかマニュアルかの別が付きます。
写真付きの運転免許証が発行されるようになったのは、北アイルランドを除き、イギリスでは1998年7月と比較的最近のことです。長いこと免許証が身分証明の手段の一つとなっている日本と比べると、信じがたいことかもしれません。現在でも、免許保持者は、写真のない従来の免許証を、その期限が切れるまでか、住所変更があるまで、保持することが可能です。「フォトカード免許証」と呼ばれる新しいタイプの免許証は、写真の付いたプラスチックのカード部分と刑罰や違反点の掲載される紙の部分との2つから成り、写真付きカードは、10年ごとに更新が義務付けられていますが、紙の部分は70歳の誕生日を迎えるまで更新は必要ありません(「きれいな免許証」に戻したい場合には、再発行を申請することもできますが)。
日本では、違反には減点方式が取られますが、イギリスは反対に加点方式となっています。違反点数が3年以内に12点以上になると、6ヶ月の免許停止処分が取られます。新米運転者の場合は特別で、運転免許テスト合格後2年以内に6点以上の違反点がつくと、自動的に免停となります。ちなみに、フランスおよびスペインも、日本と同じ減点方式で、イギリスとは逆に、免許証は12点から始まり、点数がなくなると免停となります。そこで、1点が免許証についている場合、イギリスでは「まだ1点しか免許証に違反点がついていない」という余裕の状態を表しますが、フランスやスペインでは、「もう1点しか免許証に点が残っていない」と切羽詰まった状態を示します。
「きれいな免許証」に戻るのには、違反の重大さに従い、4年から11年かかります。通常の違反の場合は、4年間で違反点は免許証から消えますが、酒酔い運転およびその結果としての過失致死による違反点数は、有罪判決から11年間免許証に残ることになります。
もっともよくある違反はスピード違反でしょうが、これに対する処分としては、3つの方法があります。それは、指定された場所に出頭して講習を受ける、違反点3点と60ポンドの罰金を受け入れる、さらに重大な違反(道路の制限速度を大幅に越えるスピード違反)の場合には、出廷するの3つです。第一の方法は、警察官の裁量により、妥当と判断された場合にのみ提供されるオプションですが、これを申し出された場合は、罰金や違反点を避けて、この方法を選ぶ人が圧倒的に多いようです。講習の内容は、スピード違反の怖さを強調した映画を見るなど、運転者啓蒙のための指導を受けるものです。
イギリスでは、スピード違反摘発の重要な道具となっているスピードカメラの数が激増しています。スピードカメラの数は全国で6,000にのぼり、そのうち2,500が移動式のものだということです。これは、ドイツの3,000台、フランスの1,000台以下と比べて(こちらの数字は少し前のものですが)、格段の多さと言えるでしょう。カメラの種類も、固定式のものだけで、8種類もあります。もっとも、固定式のカメラの中には、コスト削減のため、実際にはフイルムの入っていないものも多いようです。イギリスで市販されているサテナビには、固定式スピードカメラの設置されている場所や移動式カメラ(レーダーガン)を構えて警官が潜んでいそうな場所のデータベースを備え、それを警告するシステムを備えているものが多く見られます。
カメラでスピード違反が認められると、14日以内にその車の登録された住所に通知が送られてきますので、この用紙に、違反時に実際に運転していた人の名前を記入した上、28日以内に返送しなくてはなりません。これを怠ると6点の違反点が科されます。逆に言うと、運転中にスピードカメラがピカッと光っても(これが通常スピード違反の証拠)、14日以内に通知を受け取らなければ安心といいうことになります。
一度、フランスで、夫がスピード違反で警察に止められたことがありますが、フランスやスペインでは、運転者は常に罰金支払いのための金を携帯しなくてはならないことになっています。幸い、イギリス免許証のため、違反点数を免許証に科されることはありませんでしたが、現金で90ユーロを支払いました。釣りは出さず、現金以外はフランス国内の銀行の小切手のみで、クレジットカードは受け付けられません。罰金が支払えない場合は、その場で車を押収されるということですので、フランス・スペインで運転の際は、常に相当の現金を携帯しましょう。
イギリスには、スピード違反現場で即座に罰金を現金で支払う制度はありません。警察官に、その権限がないからです。あくまでも、違反(容疑)者に異議を唱える権利を与えようというのは、たいへん洗練されていると思います。が、短所としては、警察官の事務処理の時間がかかりすぎる、法廷が混雑するといった点が挙げられます。そこで、信号無視など一部の交通違反に対しては、その場で罰金を支払わせる権限を警察官に与えようという新しい制度を導入することが昨年提案されました。
初運転に出かけて1分も経たないうちに免許証を家に忘れたことに気付き、家に戻る途中で、車を近所の家の壁でこすったという苦い経験が日本でありましたが、イギリスでは免許の携帯は義務付けられていません。警察官にはいつでも免許証の提示を求める権利がありますが、手元になければ7日以内に警察署に出頭するよう命じられます。これを怠るとさらに違反点が科されるので、義務付けられていないとはいえ、免許証は携帯しておいたほうが、面倒はないと言えるかもしれません。
運転中の携帯電話の使用は禁止されていますが、ハンドフリー装置を利用して、携帯電話を手に取らずに使用することは許されています。また、双方向無線機は、この限りではありません。
イギリスの飲酒運転許容度はゼロではなく、呼気中100ミリリットル当たり35ミクログラムまで、100ミリリットルの血液中80ミリグラムまで、100ミリリットルの尿中107ミクログラムのアルコール濃度が認められています。そこで、警察官が怪しな運転者を止めて、「お酒を飲んでいますか?」と尋ねると、「1〜2杯ほど」と答えるの常です。では、どの程度まで飲んでも法的許容量を超えないかということになると、それは個人の体重・年齢・性別・新陳代謝率など、さまざまな要素に左右され、一概に断定することは言えません。認められるアルコール濃度は、ほかのヨーロッパ諸国と比較して高いことから、これを他国並みに引き上げることも、たびたび議論に上がっています。
さて、次回は、車検や道路税などの、運転をするコストについてご紹介したいと思っています。