■◇■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2000.10.23 ━■
Anglo−bites (イギリスつまみ食い)
` 増刊号 vol. 28
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■◇■
======================================================================
前回は、増刊号としてガソリン危機を取り上げましたが、タイムリーな話題で
よかったというお褒めのお便りをいただきました。これに味をしめて、今回も
季節もので行きたいと思います。(わたしを調子に乗せるとこわいですよ。)
この話題はすでにホームページ版の番外編でも取り上げましたが、今回メール
マガジン用にすべて書き直しました。一度ホームページのほうでお読み下さっ
た方も、改めてこの時期にイギリスの初冬の風景を思い浮かべながら、お読み
いただけたらと思います。
======================================================================
● イギリスの花火シーズン
これからだんだんにあちこちで花火の音が聞こえるようになってきます。
11月5日の "Guy Fawkes Day" を待ちきれない子供たち(ばかりでなく
たぶん大人も)が、早くも庭で花火を始めるのですね。
イギリスの花火シーズンは、11月5日を中心とするこの時期にありま
す。日本で花火といえば夏の風物詩ですが、ここイギリスでは、夏は夜9
時すぎまで明るいこともあって、夏の行事としては定着していません。
(野外コンサートの最後に花火が打ち上げられることはしばしばあります
が。)
"Remember, remember, the Fifth of November..." という文句で有名
なガイ・フォークス・デーは、1605年11月5日に起きた国会議事堂
爆破未遂事件に由来します。この日、ロバート・ケイツビーを頭とするカ
トリック教徒の一味が、国会の開会式に臨む国王ジェームズ1世と国会議
員たちを亡き者にしようと、議事堂の地下室に仕掛けた36個の樽の中の
火薬を爆発させようします。ところが、結局密告者が出て、この事件は未
然に防がれました。11月5日はこれを祝って、毎年、花火をあげ、ガイ
人形をたき火と一緒に燃やします。
この事件の動機としては、カトリック教徒を弾圧してきたジェームズ1
世と大臣を殺害し、親カトリックの政権を打ち立てようとしたという説が
これまで有力でした。しかし、最近では、実は政府のまわし者の企みで、
単純な男たちを叛徒に仕立て、人心のカトリック離れをさそい、プロテス
タントを再興させようしたという説もでてきており、真相ははっきりして
いません。
犯人一味は、翌年1月死刑判決を受けて処刑されます。この話には、必
ず「拷問の末」という一言がついています。ロンドン・ダンジョンのみな
らず、観光名所の城に行くと、必ず一番長い行列ができているのが牢獄で
あることからすると、イギリス人はどうもこの手のものが結構好きなので
はないでしょうか。
この事件の首謀者は前述したように、ロバート・ケイツビーとされてい
ますが、下っ端のガイ・フォークスの名前のほうが、後世に残るようにな
ります。響きがよく、覚えやすかったためだそうです。世のお父様、お母
様方、子供の名前をつける時には、よく考えて決めましょう。ちなみに、
アメリカ口語でよく使われる、男性を意味する "guy" という言葉は、こ
の人物の名前が語源になったという説もあります。
11月5日前後の週末には、各地の地方自治体が公園などを利用して大
がかりな花火大会を催します。個人の家でも、庭で花火パーティーを開い
たりします。(この時期の花火大会は寒いのが欠点。)我が家のお隣のよ
うに、発射台まで作って本格的に打ち上げるところもあれば、手に持って
振り回すような小さな花火を楽しむところもあります。が、最後はどこで
もたき火で締めくくります。これが、ガイ・フォークス・デーが別名
"Bonfire Night" とも呼ばれるゆえんです。このたき火の中に、ガイ・
フォークス人形を投げ入れて、花火大会はクライマックスを迎えます。
この11月5日の花火に向けて、子供たちは端切れなどでガイ・フォー
クス人形を作ります。そして、この人形と一緒に町角に立ち、"Penny for
the Guy?" と街行く人々に小銭をねだります。(物乞いと間違えて、イギ
リスは貧しい国なんだなと思った日本人がいたそうですが。)こうして集
めたお金で11月5日のための花火を買います。
● 子供の稼ぎ時
この街頭の風景も、わたしが最後に見たのは、まだ南ロンドンに住んで
いた6年前のこと。駅前の道で、会社帰りの人々に "Penny for the Guy?"
と子供が呼びかけていました。現在住んでいるビーン村には大勢の人が通
るところがありませんから、このような風景は見られません。その代わり
によく見られるのが、戸別訪問の "Trick-or-treaters" と "Christmas
carol singers" です。
「トリック・オア・トリート」。10月31日のハロウィーンはアメリ
カからの輸入品です。もともとは、スコットランド人やアイルランド人の
祖先であるケルト民族の習慣に由来するそうですから、それがブリテン島
に逆輸入されたと言えるかもしれません。アメリカほど盛んではありませ
んが、それでもこういう「おいしい」習慣はすぐに子供の間には定着する
ものです。
しかし、その定着のしかたはたいへん皮相的。日にちのほうも、週末や
ハーフタームの休みに合わせて、子供たちに都合のよいように変わります。
3日も早く現れた子供たちに、「10月31日に出直しておいで。」と
言って追い返したこともありました。幼いかわいい子供たちが、骸骨やお
化けの格好をして現れようものなら、お菓子でもあげようという気にもな
るかもしれませんが、ティーンネージャーが普段着で玄関をノックして
「トリック・オア・トリート」なんて、本当にお菓子がほしいんでしょう
か?どうもその代わりのお金を最初から狙っているようにしか思えません。
ハロウィーンには、もともとイギリスでの伝統や習慣の裏付けというも
のがありません。その一方、クリスマス・キャロルには古い伝統があるも
のの、これも現代では子供たちのいいお小遣い稼ぎの手段になってしまっ
ています。
伝統的には、きちんと歌唱指導を受けた子供たちが、大人の引率のもと、
近所の家庭を訪ね、戸口で歌を歌い、お礼にお金をもらいました。これを
貯めて、家族にクリスマスのプレゼントを買ったりしたそうです。ところ
が、最近では、近所の家を突然襲い、下手な歌を聴かせては金を言外に要
求する少年たちが出没しています。昨年のタウン紙には、「そっとしてお
いて」という見出しで、見ず知らずの少年の訪問に怯えた、一人暮らしの
お年寄りの女性からの投書も載っていました。
ハロウィーンもクリスマス・キャロルも、密接な地域社会という背景が
なくなってしまった現在には、もはや馴染まないものなのでしょう。6〜
7歳の子供たちだけで、見ず知らずの人の家に行かせる親もいると思えば、
もう一方では、そんな子供たちの様子を近くに停めた車の中から監視する
親もいます。安心して子供たちを行かせられないような人の家に、菓子や
金をねだりに子供が行くことをなぜ許すのでしょうか。このような習慣は、
子供が地域社会全体の財産であり、近隣がみな顔見知りであった頃でこそ、
暖かく迎えられたものでしょう。近所で会っても挨拶もしない、隣に誰が
住んでいるのかも知らない、そんな現代の地域社会では、そぐわなくなっ
てくるのもしかたのないことかもしれません。
● ビーン村より愛をこめて(編集後記)
イギリスもだいぶ寒くなってきました。日中の最高気温が11度という
日もあります。今週末(29日早朝)にはサマータイムも終わり、日暮れ
が一段と早くなります。そうなると唯一の楽しみはクリスマス。クリスマ
ス商戦は年々早くなってきて、今年は9月にはすでにデパートやスーパー
にクリスマス商品コーナーが現れました。9月からクリスマスの話なんて
聞きたくないわい、と怒っている人たちもいましたが、このくらいの時期
になるとやっぱりクリスマスには胸が高鳴りますね。
======================================================================
"Anglo-bites" (イギリスつまみ食い)
● 発行者:みちえ
● マガジンID:0000022307
● このメールマガジンに対するご意見・ご感想はこちらへ:
michie@tongarashi.com
● 登録解除・バックナンバーはこちらから:
http://www.tongarashi.com/beanstalk.html
または
http://www.mag2.com/m/0000022307.htm
======================================================================
----------------------------------------------------------------------
このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
利用して発行しています。( http://www.mag2.com/ )
----------------------------------------------------------------------
|