ハリー・ポッターを10倍楽しむ法

Cane
'Do they use the cane at St Brutus's, boy?' she barked across the table.
("Harry Potter and the Prisoner of Azkaban"
Chapter Two "Aunt Marge's Big Mistake")

セント・ブルータスは、ヴァーノンおじさんが作り出した架空の少年院の名前。マージおばさんの前では、この、治しようのない非行少年のためのセンターにハリーは行っていることになっています。

鞭は、かつてよく学校で使われた体罰の手段でしたが、現在、イギリスの学校では一切の体罰は禁止されています。子供の人権を守るためというのがその理由ですが、この傾向が極度に強まり、子供の人権が教師の権威よりはるかに重視されるようになっています。最近では教師は子供に指一本触れることができません。もし万が一指でも触れて、暴力をふるわれた、または性的暴行を加えられたとでも子供に訴えられた場合、教師に勝ち目はありませんから。このような傾向には賛否両論あり、マージおばさんのように「そんなあまっちょろいことを言っているから、非行少年は増える一方なのだ。」という人も少なくありません。

Fry-up
'It's normally just a fry-up for me of an evening, with twelve dogs to look after...'
("Harry Potter and the Prisoner of Azkaban"
Chapter Two "Aunt Marge's Big Mistake")

ダーズリー家での夕食時のマージおばさんの言葉。フライ・アップは、卵、ソーセージ、ベーコンなどをフライパンで焼いたものの総称。要するにフル・イングリッシュ・ブレックファーストのようなものですが、これが朝食時以外(特に夕飯として)に出てくると、フライ・アップと呼ばれるようです。(じゃがいもが含まれることもあります。)もっとも、上記の引用にあるように、フライ・アップは軽んじられる傾向があり、フル・イングリッシュ・ブレックファーストにこめられた尊敬の念とは天と地ほどの差があります。

この他に、イギリス人の簡単な夕食の典型的な例としては、「ビーンズ・オン・トースト」(缶詰のベークド・ビーンズをバターを塗ったトーストの上にかけたもの)や「チーズ・オン・トースト」(トーストの上にチェダー・チーズを乗せて、グリルで焼いたもの)などが挙げられます。

Remaining limbs
'well, I am sorry to tell you that Professor Kettleburn, our Care of Magical Creatures teacher, retired at the end of last year in order to enjoy more time with his remaining limbs.
("Harry Potter and the Prisoner of Azkaban"
Chapter Five "The Dementor")

ダンブルドア校長の新任教師紹介の言葉。もっと家族とすごす時間がほしいというのが、マグル界では最もよくある引退の理由。"in order to enjoy more time with his" とくれば、"family" と続くものと思っていると、「残った手足」と来るので思わず吹き出してしまいます。魔法の動物の世話をするのって、命がけの仕事なんですね。

Fried tomatoes
Feeling slightly more cheerful, Harry helped himself to sausages and fried tomatoes.
("Harry Potter and the Prisoner of Azkaban"
Chapter Six "Talons and Tea Leaves")

フライパンで焼いたトマトは、フル・イングリッシュ・ブレックファーストの一部。B&Bでフル・イングリッシュ・ブレックファーストばかり食べていた、日本から来た友人が、会うなりわたしに尋ねた質問が、「イギリス人って、トマトは生で食べないの?」。そりゃ、イギリス人もトマトを生で食べることもあります。(「サラダなんてうさぎの食べるもの。」というイギリス人もいまだに少なくありませんが。)

Marmalade
'Pass the marmalade,' said Hermione.
("Harry Potter and the Prisoner of Azkaban"
Chapter Six "Talons and Tea Leaves")

ホグワーツでの朝食のシーン。マーマレードもイギリス人の朝食には欠かせないものです。トーストだけで済ませる時にはもちろん、フル・イングリッシュ・ブレックファーストの最後を締めくくるのも、マーマレードに限ります。

Sybill Trelawney
'Sybill Trelawney, Divination teacher,' Harry said.
("Harry Potter and the Prisoner of Azkaban"
Chapter Six "Talons and Tea Leaves")

シビル・トレローニーは、ホグワーツの占いの先生。ぼんやりとした、夢を見るような声の持ち主。と言えば、誰かを思い出しませんか?そう、7年前、イギリス国営宝くじが始まったばかりの頃、毎週土曜日の夜、BBCの抽選生中継番組の中で、水晶玉を前に今週の当選者を予言していたミスティーク・メグ。「頭文字はMかK、職業は消防士か教師、星座は水瓶座か牡牛座、色はブルゥーゥーゥー(語尾は消え入るように)」なんてあいまいな予言で、毎週3万人くらい人たちに「今週のジャックポットはわたしかも」という夢を抱かせていました。その独特なスタイルゆえに一世を風靡したと言ってもいいでしょう。定着した言い回しとして彼女の名前はすでに会話表現の一部にもなっています。"I'm not Mystic Meg."と言うと、「わたしには未来のことはわからない」を意味します。ホグワーツの占いの教師は、彼女をモデルにしているとわたしは信じて疑いません。ミスティーク・メグは、今はもう宝くじ番組には出演していませんが、某タブロイド紙の星占いコーナーで今でも活躍しているようです。

ミスティーク・メグ、もとい、シビル・トレローニーはこの第3巻だけでなく、第4巻にも登場しますが、この2巻ともに、占いに対する作者の皮肉な姿勢が表れています。特に、第4巻で、ハリーとロンが自分たちの悲劇的な運命を予言すれば予言するほど、教師は喜ぶところなど、占いは常に悪いほうに傾くという常識を皮肉っていると思えます。(悪い予言がはずれた時に、文句を言う客は少ないが、よいことを予言しておいてはずれた時の客の反応がこわい、という占い師の防衛本能から来ているのでしょう。)

Steak-and-kidney pudding
'They wouldn't sack him, would they?" said Hermione anxiously, not touching her steak-and-kidney pudding.
("Harry Potter and the Prisoner of Azkaban"
Chapter Six "Talons and Tea Leaves")

ホグワーツでの夕食のシーン。(ハグリッドの授業中、ヒポグリフがマルフォイに怪我をさせた事件について。)ステーキ・アンド・キドニー・パイと中身は同じですが、パイが、パフ・ペイストリーのパイ皮を上に乗せて、オーブンで焼くのに対して、プディングは、小麦粉と塩にふくらし粉をまぜた生地を蒸し型の周りと上にかぶせ、ちょうど具を生地ですっかりおおうような形で蒸します。

ステーキ・アンド・キドニー・プディング
牛脂(スウェット)入りのこってりした皮を使ったプディング。
中身はギネス入りのソースで煮込んだ牛肉。


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