ハリー・ポッターを10倍楽しむ法

London, Paris, Hogsmeade
Cars that were usually gleaming stood dusty in their drives and lawns that were once emerald green lay parched and yellowing - for the use of hosepipes had been banned due to drought.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Eight "The Quidditch World Cup")

「ロンドン、パリ」と大都市の名前を並べた後に、思い切りローカルな地名(その店のある場所)を持ってくるのは、イギリスの個人商店の伝統的な宣伝ジョークでした。これを一般的に有名にしたのが、1981年に最初のシリーズが放映されて以来、息の長い人気を誇るBBCのコメディー番組 "Only Fools and Horses" です。主人公の経営するトロッター商会のバンには、"New York, Paris, Peckham"という有名な宣伝文句が書かれています。(ペッカムは主人公兄弟の住む、南ロンドンの町。ちょっと物騒な地域として知られています。)この部分は、その伝統ジョークを踏まえたものと思われます。

また、防犯ブザー内蔵の箒というのも、せちがらい現代イギリス社会を反映していて、「魔法使いの世界ですら泥棒の心配をしないといけないのか。」と苦笑をせずにはいられません。

Leprechaun
'Leprechauns!' said Mr Weasley, over the tumultuous applause of the crowd, many of whom were still fighting and rummaging around under their chairs to retrieve the gold.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Eight "The Quidditch World Cup")

レプリコーンは、アイルランド伝説に出てくるいたずら好きな小人の精。地理的に近いため、イギリスでもよく知られています。

Spotted dick
'Spotted dick, look! Chocolate gateau!'
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Twelve "The Triwizard Tournament")

スポティッド・ディックも、伝統的なイギリスのデザート。一言で言うと、干しぶどう入りの蒸しケーキということになります。(干しぶどうが、スポティッドといわれるゆえん。)作り方は、まず小麦粉、ふくらし粉、ミックス・スパイス、塩、牛脂、砂糖、干しぶどうを混ぜて生地を作ります。これをふきんに包んで、1時間半ほど蒸してできあがり。カスタードを添えていただきます。

しばらく前に、スポティッド・ディックという名前では女性の買い物客が買いにくいであろうという理由で、イギリス最大手のスーパーマーケットチェーンであるテスコが、自社ブランドの商品名をスポティッド・リチャードに変えました。(ディックはリチャードの愛称で、俗語で男性の名前以外の意味を表します。)この決定は失敗であったらしく、現在では以前の伝統的な名前に戻っているそうです。

スポテッド・ディック
たっぷりかかったカスタードのため
スポテッド(ぼつぼつ)さがわからないかな?

Joke
'I am not joking, Mr Weasley,' he said, 'though now you mention it, I did hear an excellent one over the summer about a troll, a hag and a leprechaun who all go into a bar -'
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Twelve "The Triwizard Tournament")

イギリス人はジョークが大好き。ちょっとおもしろいジョークを仕入れると、誰かに披露せずにはいられません。アルバス・ダンブルドアもその一人のようです。もっともポピュラーな民族ジョークのオチは、イギリスでは決まってアイルランド人ですが(アメリカではポーランド人が多いようです。)、このジョークにもレプリコーンが出てくるところを見ると、どうやら、魔法使いの世界のジョークでもオチはアイルランド人のようです。

Bless you
'Bless you,' said Ron.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Sixteen "The Goblet of Fire")

フランスにあると思われるボーバトンズ校と東ヨーロッパにあると思われるダームストラング校を招いての晩餐。この日は、外国からのお客様をもてなすために、ブイヤベースなど外国料理が、ホグワーツのテーブルに上がりました。インド料理はすっかり英国料理になってしまいましたが、イギリスでは、外国料理はまだまだ庶民には馴染みの無いものです。特に食に関しては、保守的なイギリス人は多く、好きなものを毎日食べていれば幸せ、敢えて得体の知れない外国料理などに手を出す必要があるものかという考える人は少なくありません。

「これ何?」と尋ねるロンに、ハーマイオニーが「ブイヤベース」と答えたところ、フランス料理に馴染みのないロンには、くしゃみに聞こえたのでしょうね。「ブレス・ユー」とハーマイオニーに返します。くしゃみをした人に「ブレス・ユー」と言うのがイギリスの習慣です。"(May) God bless you"(神のご加護がありますように)という表現がもとになっています。この習慣の起源は6世紀頃にまでさかのぼるとも言われ、かなり昔からあった習慣のようです。その起源についてはいろいろな説がありますが、くしゃみと同時に魂がからだの外に吐き出されるとかつて信じられていたなど、いずれも魔よけの意味から来るようです。

Black pudding
'I'll take your word for it,' said Ron, helping himself toblack pudding.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Sixteen "The Goblet of Fire")

ブラック・プディングは、豚肉、豚の血、牛脂から作られた、黒い色をした太いソーセージ。輪切りにしていただきます。プディングとは言え、デザートではありません。イングランド北部でよく食べられ、特にイングリッシュ・ブレックファーストに添えられることが多いようです。見慣れないブイヤベースに尻込みしているロンですが、外国人にしてみれば、ブラック・プディングのほうが、よっぽど気持ちが悪いですよね。

イングリッシュ・ブレックファースト
フルイングリッシュブレックファーストの一例。
これに炒めたマッシュルーム、
油で揚げたパンなどがつくことも。

ブラックプディング
ブラック・プディングのクローズアップ

Wine gum
'..Unless you swapped its fangs for wine gums or something, that would make it less dangerous...
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Twenty "The First Task")

ワイン・ガムは日本でいうグミキャンディー。これも伝統的に人気のある駄菓子です。各種フルーツの味がします。

Sausage roll
'It was someone being tortured!' said Neville, who had gone very white, and spilled sausage rolls over the floor.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Twenty-One "The House-Elf Liberation Front")

トライウィザード・トーナメントの最初の課題が終わり、ハリーの成功を祝うパーティーのシーンですが、このような軽い立食パーティーなどでよく出されるのが、ソーセージ・ロールです。ソーセージ肉(何が入っているかは謎)をパフ・ペイストリーで包み、オーブンで焼いたものですが、近頃はスーパーで冷凍食品が簡単に手に入ります。オーブンで30分ほど焼くだけ。しかも、通常冷めたものを出すので、パーティーのずっと前に準備しておくことができます。子供も大人も大好き。お腹にもたまるし、簡単なパーティーやピクニックに重宝する一品です。

Mince pie
There was also, of course, Mrs Weasley's usual package, including a new jumper (green, with a picture of a dragon on it - Harry supposed Charlie had told her all about the Horntail) and a large quantity of home-made
mince pies.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Twenty-Three "The Yule Ball")

クリスマスにミンスパイは欠かせません。ミンスパイと言っても、肉は入っておらず、細かく刻んだリンゴ・干しぶどう・香辛料・脂肪・砂糖を煮たものが中に入っています。パイ皮は、伝統的にはサクサクのショートクラスト・ペイストリーでしたが、最近では、パフ・ペイストリーものも人気です。

ミンスパイについて、詳しくは、"Anglo-bites"(イギリスつまみ食い)のクリスマス特集をご覧下さい。


クリスマスに無くてはならないミンスパイ。

Weird Sisters
A set of drums, several guitars, a lute, a cell and some bagpipes were set upon it.
The Weird Sisters now trooped up onto the stage to wildly enthusiastic applause; they were all extremely hairy, and dressed on black robes that had been artfully ripped and torn.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Twenty-Three "The Yule Ball")

ザ・ウィアード・シスターズは、魔法使いの世界でとても有名な音楽グループ。ホグワーツのクリスマス・ダンス・パーティーで演奏するのがこのシーン。

"The Weird Sisters" は、スコットランドを舞台とした、ウィリアム・シェークスピアの劇「マクベス」に登場する3人の魔女を表す名称としてしばしば使われます。上記の記述に、演奏楽器としてバグパイプやチューダー朝の楽器・リュートが出てくることから、この人気音楽グループはマクベスに出てくる魔女たちを暗示しているのではないかと思われます。イギリス人にしてみると、"The Weird Sisters" という言葉はポップグループらしい響きがあるらしく、そこから作者が音楽グループの名前に使おうと思い立ったのかもしれません。

個人的には、このウィアード・シスターズ、(毛深くはないですが)アイルランドの兄妹ポップグループ、ザ・コアーズを思い浮かべてしまいます。だって、彼女たちって魔女っぽくありません?

Easter egg
Percy's letter was enclosed in a package of Easter eggs that Mrs Weasley had sent.
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Twenty-Eight "The Madness of Mr Crouch")

イースターエッグを贈るのはイースターの習慣の一つ。昔は本物の卵を交換したそうですが、現代ではチョコレートをプレゼントするのが一般的です。(どこの国でも、チョコレート屋の商魂はたくましい。)大きな卵の形をしたものから、うさぎの形をした小さなものまでいろいろ売られていますが、一番人気があるのが、チョコレートでできた大きな卵の殻の中に、いろいろなチョコレートの小型版の詰め合わせが入っているものです。ロンのお母さんがハリーにプレゼントしたのも、この類のものではないかと思われます。

イースターの起源やイースターと卵との関係については、"Anglo-bites"(イギリスつまみ食い)のイースター特集をご覧下さい。

Cornish pasty
'Couldn't remember all the goblin rebels' names, so I invented a few. It's all right,' he said, helping himself to a Cornish pasty, ...
("Harry Potter and the Goblet of Fire"
Chapter Thirty-One "The The Third Task")

コーニッシュ・パスティーは、コンウォールの炭鉱夫家庭が生んだ究極のお弁当。牛肉、ジャガイモ、たまねぎ、スウェーデンカブラを、伝統的にはさくさくのショートクラスト・ペイストリーで包み、オーブンで焼いたものです。これ一つで完璧な食事と言うことで、フライド・ポテトを添えたりするのは邪道だそうです。しかし、社員食堂やカフェテリアなどのランチでは、これにグレービーやフライド・ポテト、野菜などが添えられて出てくることもあります。ホグワーツの昼食も、たぶんこのアップグレード・バージョンなのではないかと思われます。

コーニッシュ・パスティーは、コーンウォールの人々の生活の知恵がどっさり詰め込まれたすぐれもの。この究極のお弁当について詳しくは、"Anglo-bites"(イギリスつまみ食い)の「コーニッシュ・パスティーの話」をぜひご覧下さい。


究極のお弁当・コーニッシュ・パスティー。
野菜を付け合せるのは実は邪道だということですが・・・。


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